Wonderful love


私は時々考える。
愛する許しや信じる許しは、一体誰からもらえばいいのだろう。

天国地獄。
あっちかこっちか、白黒つけなくてはならないこの仕事だというのに、あの子の前ではそれができない。
いろんな思いがたくさん溢れて、右へ左へうえした前後。
ベクトルは定まることを知らず、輪郭もあやふや。
『こういうの』は知らない。

好きになっていいのだろうか。
信じてもいいのだろうか
きっといけないだろうから、誰か早く叱ってほしい。止めてほしい。
私が何もかも考えられなくなる前に。
愛してもらえなかったらどうしよう。思ったものと違ったらどうしよう。
傷付くことばかり予想する自分の頭は空しく、どんどん臆病になっていく。
違うものになろうとしている自分が恐ろしくて絶望する。

気持ち悪くて何もかも捨て去りたくなるのに、もみ消そうとするのに、声をかけると楽しくて、返事が来ると嬉しくて、だんだん自然になっていくのも心地よくて、一緒に笑うと、うそみたいに満たされる。

いいのかな(いいのかな)
だめだよね(だめだよね)

そんな時あの子は私に言ったのだ。

「いいんですよ」

私はいっぺんに安心する。

そうか(いいのか)
そうだ(そうだね)
私が選んだのだ。
私が決めたのだ。

私はあの子を好きになる。
私はあの子を信じてみる。

あの子の笑った顔が見たくて、笑わせてみたくて、すると私も笑ってしまう。
あの子の笑顔が嬉しかった。
笑うことが楽しかった。

あの子を好きになってよかった。
そう思える自分が好きだった。








「いいんですよ」

あの日の無責任な自身の言葉を、僕は文字通り死ぬほど後悔した。

「特別」を作ってしまったがために、彼は『平等』の象徴でいられなくなった。
冥界は僕ではなく、彼を自身から追い出した。
置き去られた彼のトランク。
役に立たない物ばかりの、彼の七つ道具。

きっとあなたは驚くでしょう。
取ってあるんです。
捨てずに、ちゃんと全部。
あんなくだらないものをです。
あなたの全て。

僕は世界中の誰よりも罪深い。
閻魔大王に恋をした。
愛されたいと願ってしまった。
そして愛されてしまった。

僕は彼を失った。


僕は今、冷たい土に体を預けて虫のように呼吸している。
ずいぶんと長いことこうしているのに、誰も僕を連れて行ってくれやしない。
あなたが見たら怒るだろう。
僕を立たせ、抱え、風呂に入れ、食事をさせるだろう。
そんな甘い匂いが、だんだんとしてくるのだ。


ごめんなさい大王。
僕はもう笑えません。




参考:RADWIMPS「いいんですか?」/天野月子「砂糖水」/ポルノグラフィティ「アゲハ蝶」

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